笑味の店について


  沖縄本島の北のすみっこに、大宜味村はあります。

  やんばるの森と海に包まれた、ちいさくて静かな村。
  いちばんの宝ものは、おばぁです。

  100歳をこえてもなお畑仕事をするような、
  なにかうれしいことがあったらみんなで歌い踊りだすような、
  元気で、底抜けに明るい、おばぁたち。
  高齢化社会の極みをいくような人口比率ですが、
  こんなにほがらかな空気に満ちた村はないでしょう。

  「安定した公務員なんか辞めて、何考えてるねー?」
  「わぁけーが買ってまで食べんような野菜を、
   だれがお金はらって食べてくれるねー?」

  おばぁたちが育てた島野菜をつかって、料理のお店を開きたい。
  そう言うと、おばぁたちは口々に反対の声をあげました。

  時は1990年。
  今でこそ注目されている島野菜も、シークヮーサーも、
  当時は忘れ去られていきそうな状態でした。
  おばぁたちの畑のすみっこで、
  ひっそりと作られ、ひっそりと食べられているだけ。だからこそ…。

  反対をおしきり、自宅のガレージを改造して、
  「笑味の店」をオープンしました。
  それからずっと、おばぁたちとともに、歩んできました。


                「書籍について」につづく。